初代ゴジラ/The First Godzilla

ゴジラ [DVD]
初めてゴジラを観た。しかも史上最古、昭和29年(1954年)の初代作品。もちろんモノクロ。
結論から言うと、感動し、そして悲しくなった。今まで怪獣映画だと思い込んで、観る気がしなかったのだが、今回ちゃんと観て素直によかった。観ていない人はお奨め。初代ゴジラ。あ、それから古い東京の街並みが多く登場することもかなり楽しめる。銀座や有楽町駅付近の景色は、今と大きく変わることなく、しかしいい感じにレトロで味わいがある。河内桃子さん、宝田明さんを始め、当時の俳優さんは気品があり美しく、そして話し言葉も現代人と比して、なんともきちんとしている。いつぞやどこかで梅宮辰夫さんが最近の芸能人には品位がない…みたいな発言をされていたが、もしかしたらこういうことを指しているのかもしれない。かつて、銀幕のスターとは本当に大衆とは掛け離れた美貌や、品位を誇っていたのかもしれない。


この映画が大ヒットした当時とは、まだ戦争や空襲の記憶も新しい時代。ゴジラが口から放射能火炎を吐き、東京を廃墟にしていく惨状は、あの悲惨な戦争時代を彷彿させるものだったそうだ。海から上陸したゴジラが、戦争から復興した品川〜銀座和光の時計台〜国会議事堂辺りのランドマークを壊し、そして周囲を焼け野原にしてしまう。当のゴジラはというと、人間たちの行なった原水爆実験の産物として生まれてしまった存在とされ、出生時代は人間のせい。そして、そのゴジラを退治するためには、映画内に登場する若い科学者芹沢が個人で発明したとされる「水中酸素破壊剤」を使用するしかない局面を迎える。芹沢は、科学者としてひとつの研究をする中で、偶然的にもこの水中酸素破壊剤に出くわし、その発見を後悔し、決して表には公表しないと心に決めていたにも関わらず、惨状から街を救い出す唯一の手段をして自らの実験結果をさしだすことに巻き込まれる。彼は科学者として、映画の中でこう言っている。「(原水爆や水中酸素破壊剤などを発明することと、それらの戦争などに悪用してしまうこととは、別の問題で)一個の人間としてそれを許すわけにはいかない。」と。結局、この映画のテーマはそこではなかったか。映画では、人間が創り出してしまった悲劇のゴジラを退治しなくてはならないことがひとつの悲劇とも描かれ、そしてその退治のために水中酸素破壊剤を使用することになった科学者芹沢は、海中に潜水し散布させ、海上の船にいる仲間に散布がうまくいっていることを伝えたその直後、さよならを告げ、命綱を断ち切る。そう。彼は、その前のシーンでこう言ったからだ。「いくら関係書類を全て焼いてしまい、世に出回ることを防げたとしても、発明してしまった私の脳の中には記憶されていて、いつか戦争などのために使用させられてしまわないとも限らない。だからこんな発明などしなければよかった…。」


水中酸素破壊剤が利き、ゴジラ海上に半身を浮かび上がらせ、身をもだえさせながらヒ〜〜〜〜ンと淋しそうな雄たけびをあげ、芹沢の残った海底に落ちていく。その姿と悲しい声は、今日初めてゴジラ映画を観た私にも深く、悲しく響いた。戦争の悲惨さを再燃させ、反戦反核のメッセージを込められたという初代ゴジラと、その大ヒット。その事情を今ごろ知って素直に学んだ。


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