ガイアの夜明け「ようこそニッポン!観光革命」/Visit Japan Campaign

aztimegoesby2005-02-22

録画していたガイアの夜明け「ようこそニッポン!観光革命」を観た。ようこそニッポン!とは、別名「ビジットジャパンキャンペーン」とも呼ばれ、国土交通省が旗振りをしている施策。海外を訪問する日本人観光客数が約1,600万人である今日、約500万人と1/3しかない訪日外国人数を憂い、2010年までに1,000万人の訪日外国人誘致をめざすというもの。ちなみにかつて運輸省時代にも「ウィルカムプラン21」という同じ趣旨のキャンペーンが実施されており、業界人にとってはさほど目新しい企画ではなかったりする。
http://www.vjc.jp/
http://www.vjc.jp/e/vjc.html (English)


街中や空港に貼られている"Yokoso! JAPAN"や、"I love New Tokyo"等のポスターにいち早く私の目がいくのはインバウンド(訪日外国人誘致)ビジネスという特殊な観光分野に携わっていたからに他ならない。国の旗振りで進められるこうしたキャンペーンや施策はたいてい、民間企業の現場からみたら絵空事に過ぎない。IT革命しかりだ。インバウンド最前線にいる私の元同僚達は、常に世界における日本のポジショニングを肌で感じている。例えば先日飲んだ先輩は、「最近では中国からの訪日数が圧倒的。受け入れ側である旅行会社も中国語のできる社員の採用を強化している。」と話してくれた。中国の一般観光客に渡航ビザが発給されるようになり、数がどんどん増えているわけだが、通貨価値の格差や商習慣、文化的な違いも大きく、これまでは観光社や日本を案内するガイド、日本サイドのホテルやバスを手配するまでの一切を中華系のグループで賄っていたり、激しい価格破壊に日本の旅行会社は受け入れることで収益率が減るばかりか、下手をしたら赤字になりかねないことも多かった。また、成田空港到着と共に逃亡してしまう等の客も結構あり、その逃亡の責任はなぜか日本の旅行会社が国土交通省から罰則を受けるという立場に置かれており、訪日誘致!と声高に政府が言う割には、民間企業の背負う苦難が多きすぎると嘆いている旅行会社も多い。たしかに、以前からブラジルの日系人里帰り団や、アジア諸国からの訪日団など特に経済格差の大きな地域からの受け入れには、費用の未回収、逃亡などの問題がつきものだったのを憶えている。やっと日本への切符を手にしたものの、銀座などではお土産が買えず、途方に暮れる姿を見て、その頃から流行りだしたダイソー等の100円ショップへご案内することを考え出したのもそんな中から見出した苦肉の策だった。


かつてのオウムによる「地下鉄サリン事件」や、「阪神大震災」等の事件や事故による訪日外国人数の激減という例や、韓国の通貨危機による韓国からのビジネスの低迷、円高に突入すると突如キャンセルが相次ぎ、逆に現在のようにユーロ高や豪州の好景気下ではその方面からの訪問者が増えるという具合に世界と日本の経済関係、日本の治安状態、そしてアニメや経済、ファッションなど日本文化の人気などの「今」が一番わかりやすいのがインバウンドのビジネスなのだ。日本円で取引するビジネスであるため、円高だとビジネスに打撃を受けるという通常の旅行会社の原理とは逆行をするしくみになっている。


番組の中で北海道のニセコがオーストラリアからのスキー客に人気であることを伝えていた。果て、どうやってそんなきっかけがあったのだろうかとパートナー君と不思議がっていると、すぐに答えが説明された。一人のオーストラリア人男性がこの町を好きになり、彼がニセコに住み、その口コミでオーストラリアからの訪問客が相次ぐようになったそうだ。やはりきっかけ作りは日本サイドではなかった。南半球とでは季節がちょうど逆なため、真夏のオーストラリアから北海道にスキーをしに来るのにはパーフェクト。日本人が夏に豪州へスキーに行くのと同じ理屈だ。また、ケアンズシドニーのような街ですら自然を大切にして暮らしをエンジョイするAussieやKiwi達のこと、東京のような街なんかより自然が豊富な北海道をこよなく愛するのかもしれない。本格的な国際リゾートを作りたいと夢の企画をする別のオーストラリア人ご夫妻も番組で登場していた。まぁ、本格的な国際リゾートって、かつての上高地や軽井沢なども歴史的に見たら、欧米人が根付かせてくれたものだしね。自然をなるべく破壊せずに森林浴や、長期休暇を過ごすライフスタイルやゆとりの概念、そういうものをもったオーストラリアの人々に、却って教えられることが多いかもしれない。


温泉や雪が好きな台湾のお客さんが、お刺身を食べられず鍋に入れて火を通している場面が紹介された。インバウンドではそういう異文化との接触は日常茶飯事。特に食事のアレンジを巡る国民ごとの違いは、フランス、ドイツ、イタリア、韓国、日系、中国などでノウハウがあるくらいに全部違う。だからインバウンドを取り扱う旅行会社では、方面別に担当がきっちり分かれていて、その方面担当者は英語はもちろんのこと、スペイン語やフランス語、韓国語、中国語…といったものが話せることが多く、ちょっとしたミニ大使館みたいな状態。ニッポンのよい印象を強めているのは案外政府なんかより、こういう前線で日々工夫している我がいとしの元同僚達だったりするのだ。だから、もちろんYokoso!JAPANには根本的な成果を出してほしいけれど、予算の使い方をうまく工夫してほしいと願ってしまう。